コラム
2020.08.14
エレベーター内にある秘密の小部屋について
金沢市では7月は長雨が続いていましたが、8月に入るとカンカン照りが続き、たまにバケツをひっくり返したような夕立に見舞われています。熱帯気候になったような気がするのは私だけでしょうか?
さて、今回は『エレベーター内にある秘密の小部屋』についてお話したいと思います。
たいていのマンションには、エレベーターの奥の壁の下半分に鍵付き扉があると思います。
※ もしかしたら、台車や荷物などで傷つかないよう壁がフェルトのような分厚い布地で覆われているかも知れません。
その扉の鍵を開けると、奥行きが30cm以上広がるのです。小柄な人間なら体育座りで隠れることができるくらいの空間です。
ここで以下の疑問が出てきます。
(1)なぜ、初めから広げた奥行きで作らないのでしょう?
→ ずばり省エネです。
マンションに設置されているエレベーターは、6名か9名の定員が多いようです。また、この定員数だと標準の奥行きは115cmもしくは152cm程度になるそうです。
上げ下げするカゴが大きくなるとその分だけ重くなりますから、少しでも小さく作る方が工事費や電気代の節約につながります。
(2)この秘密の小部屋、何のために作ったのでしょう?
→ 下半分だけ奥行きが広がるってところがミソなのですが、以下2つの理由があるそうです。
① 消防署の救急隊員さんがストレッチャー(寝台)を横にしたまま搬入可能にするため。
ストレッチャーは、人を乗せるために奥行きが200cm程度あります。そのため、このままでは患者さんを横たえたままエレベーターに乗せることができません。しかし、秘密の小部屋を開くと下半分は奥行きが200cmになるので、患者さんを横たえたままエレベーターで運ぶことができます。
② ご遺族や葬儀会社の方が、棺に納めたご遺体を横にしたまま搬入・搬出可能にするため。
古代エジプトの壁画では、ご遺体を納めた棺を立てて拝んでいる遺族が描かれています。しかし日本では棺を立てる慣習はあまり見られません。(不勉強のため知らないだけかも知れません……)
それに、ご遺体を立てたり横たえたりを繰り返すと損傷も心配ですし、罰当たりな気もします…そこで、ご遺族がご自宅マンションでのご葬儀を希望された場合、棺に納めたご遺体をなるべく動かさないように横たえたまま移動できるようにしよう、という配慮から秘密の小部屋が作られたそうです。
(3)どうして普段は鍵をかけているのでしょう?
『誰でも使えるように鍵を開けておいてくれれば良いのに…』
→ 一言でいうと安全確保のためです。
先ほども申し上げましたが、小柄な人間なら難なく収まる空間です。
お子さんがかくれんぼで入って、何かの拍子で鍵がかかって閉じ込められたら大事件になってしまいます…しかし、いざ使いたい時に鍵が開けられないと困るので、ほとんどのマンションでは管理人室に鍵が保管されているはずです。
なお、以前はエレベーターのメーカーごとに鍵の形がバラバラだったため、救急隊が一刻を争う時に「管理人さんが見つからない!」、「今日は管理人さんが休みだ!」、「鍵がどこにあるのか分からない!」という事態に陥ったことが多々あったそうです。この場合はストレッチャーが使えないため、救急患者さんの搬出は大変だったようです。
そこで、平成15年エレベーターメーカーの皆様が垣根を超え、秘密の小部屋の鍵を統一してくれました‼この証として、この統一された鍵穴と鍵本体には『E.M.T.R』と刻印され、『担架等緊急運搬用』、『E.M.T.R』、『エレベーター トランク キー』、『Emergency Medical Trunk Room』などと書かれた札が付いています。
なお、全国の救急隊員さんは同じ鍵をお持ちなので、ご利用になっているエレベーターが『E.M.T.R』に対応していれば、迅速な救助が可能になります。もし、古いエレベーターで鍵穴に『E.M.T.R』の刻印が無い場合、エレベーターのメーカーさんへ問い合わせてみてはいかがでしょうか?
申し遅れましたが、この小部屋の正式名称は『エレベーター内トランクルーム』とのことです。『秘密の小部屋』と言って
も周囲の方々には分かっていただけないのでご注意ください。
カテゴリ
2020.07.15
マンションの宅配ロッカー設置について
7月に入り、金沢市でも雨が降り続くようになりました。
ニュースや新聞などの報道によると、九州や他の地域において、大雨による被害はとても甚大で、大変ご苦労をされている
とのことです。心よりお見舞い申し上げます
今回は、宅配ロッカー設置についてお話したいと思います。
とうとう、管理しているマンションにも宅配ロッカーが設置されました。
このマンションは20年以上前に建てられた物件で宅配ロッカーは無かったのですが、2~3年前から一部の組合員さん
より設置のご要望が寄せられていました。
しかし、このご要望に対して、
「配達員さんに再配達依頼すれば良いから必要ないと思う。」(配達員の皆さん、本当に申し訳ありません…)
「エントランスに設置するしかないと思うが、どの位置に設置したらいいのか想像できない。」
「個人的には不自由を感じていないので、費用をかけるのはもったいない」
というご意見があり、アンケートにおいても設置希望は少数派でした。
確かに、配達員さんの顔を見ながら直接手渡ししてもらえる方がお互いに安心ですし、宅配ロッカーがあるマンションの
多くは設計段階で位置を決められていて美しく収まっています。建設後に設置する場合は、美観を損ねる可能性があります。
このため、宅配ロッカー設置はしばらく見送られてきました。
ところが、今年2月から急に風向きが変わってきて、
「コロナウイルス感染症予防のため、配達員さんからの荷物の受け渡しを間接的にできるようにして欲しい。」
「防犯上、宅配ロッカーの必要性を感じるようになった。」
「配達員さんから『宅配ロッカーは無いのですか?』と質問された。再配達がしんどいのかも知れない。」
とのご意見が他の組合員さんからも寄せられるようになりました。
理事会および総会において、設置可能な宅配ボックスを探して設置しようとご意見がまとまり、総会議決の1ヶ月後に機械式(ダイヤル式)の宅配ロッカーが設置されました。その特徴は以下のとおりです。
(1)使い方
① 配達員さんには、まず荷物を宅配ロッカーに入れ、任意の暗証番号を設定して手動で入力していただきます。
② ①で設定した任意の暗証番号を配達通知書に記載し、送り先の住居の郵便ポストに投函していただきます。
③ 送り先の方には、配達通知書に記載された暗証番号を入力し、荷物を取り出していただきます。
(2)長所
① 電池式のロッカーであるため、配線工事が必要ありません。
② 設置および維持費が少額で済みます。
③ 集中管理式でないシンプルな機種のため、1つが故障しても他のロッカーが使用可能です。
(3)短所
① 配達通知書が他の郵便物やチラシに紛れ込んでしまったため、送り主の方が認識できず、荷物が取り出されなかったことがあります…
② 全体を管理する操作パネルがないため、荷物の長期滞留がないかどうか、管理人や管理会社が目視点検する必要があります…
5月に宅配ロッカーが設置されてから、半分程度のロッカーが毎日使用されているようです。
意外とご利用いただけているんだな…配達員さんのお役に立てたのかな…としみじみ思います。
もし現在、宅配ロッカー設置をご検討中の管理組合様がおられたら、ご参考になれば幸いです。
カテゴリ
2020.06.16
オンライン理事会(総会)について
最近の金沢はまだ6月にもかかわらず、真夏日と大雨の日が増えています。温暖化による気候変動かどうかはわかりませんが、以前の気候とは明らかに変わってきているように思います。
温度と湿度が高い日が続きますが、皆様の体調はいかがでしょうか。
業種にもよるとは思いますが、何らかの形でテレワークやオンライン会議(たまには飲み会も?)が始まった、という方は多いのでは無いでしょうか?
実はマンションでも、管理組合の理事会や総会が通常通りに開催できない、といった問題が発生しています。
総会については「書面決議」という方法があり、全員賛成であれば決議することが可能です。しかし、1人でも反対なら可決できないので、なかなかにハードルが高い方法です。実務的には「総会の会場は通常通りに準備するが、会場の人数を減らすため、できる限り『議決権行使票』の行使をお願いする」といった対策を取ることになるかと思います。
理事会の場合は、そもそも書面決議や委任自体が認められていないので、さらに大変です。
会社のちょっとしたミーティングであれば「チャット」を利用することも可能ですが、管理組合の理事会は規約で定められた機関であるので、議論の過程を「省略」することは問題があるようです。
いろいろ調べていたのですが、社団法人など「管理組合に類似した組織の理事会」については公的なガイドラインがありました。詳しく書くと長くなるので省略しますが、ポイントは「出席者同士がお互いの反応を見ながら、リアルタイムで意見交換ができる」ことのようです。したがって、テレビ会議やオンライン会議はOKですが、チャットや掲示板はNGということらしいです。
そこで、弊社が管理させていただいているマンションでも、理事会や総会をオンライン会議の形式で行ってみました。
感じたことを下記に書きます。
(1)長所
① 自分の好きな場所から会議に参加できます。
特に、自宅なら移動しなくていいし、病気に感染したりさせられたりする心配もないので、気楽に会議へ参加できます。
ネット環境があれば職場や店舗からの参加も可能なので「今日は理事会開始時間までに管理人室へ行かねば!」と焦って職場を飛び出したり、買い物を途中であきらめなくても良いのです。
② 資料を無くしても大丈夫です。
「もらった資料どこ行ったんやろ…」「あっ、資料持ってくるの忘れた…」という時でも、オンライン会議ならパソコン画面上で見せてもらうことができます。事務局にお願いしてみましょう。
③ 話が関係ない方へ飛ぶことが少なく、議事が早く進行します。
たくさんの人が集まると「そういえば、この前こんなことがあって…」と思い出したように話し出す人がいて議事の進行が止まってしまうため、会議の時間が長引いたり、ひどい時は時間切れになってしまい議事の審議が途中までしかできなかったことはありませんか?
オンライン会議の場合は「隣の人」といった概念が無いので、雑談をすること自体が難しいです。すると、話があちこち飛ぶことが減るので、議事が早く進行しますし、会議の終了時間も早くなりました。
(2)短所
① パソコンやタブレット、およびネット環境が無いと会議に参加できません。
なじみが薄い年配の方はオンライン会議への参加が難しいようで、会場参加の人数は想定よりも多かったです…
② 音質や画質は、通信状況に左右されます。
インターネット回線が混雑してくると、音質や画質が落ちてきて話が聞き取りづらくなったり、参加者の顔が見えづらくなったり、最悪の場合は止まったりします。参加者のうち一人でもそうなると会議を中断せざるをえなくなります。
③ 多くの人が同時に発言できません。
オンライン会議のシステムをいろいろ見ましたが、基本は少人数向けなので、多くの人が同時に発言すると誰が発言したのか分からなくなります。そのため、通常は「ミュート機能」を活用していただき、意見を述べたい時は挙手するという進め方をオススメします。
ちなみに、事務局を担当している弊社職員によると『オンライン会議になっても、資料を準備して組合員様へ配布し
たり、オンラインに参加できない方へ会場の準備をしたり、会場で議事進行することは欠かせないので、やることは
集会形式の会議と変わらないです』と申しておりました。
今は鳴りを潜めているコロナウイルスですが、いつ第2波が襲ってくるか分からないため、理事会や総会をオンライ
ン会議方式で開催することをご検討されている理事長さんも多いのではないでしょうか?
事務局を担当している管理会社や管理組合の方へ、少しでもご参考になれば幸いです。
カテゴリ
2020.05.12
マンションの植栽管理について
4月は花冷えで寒いくらいの日が続きましたが、5月に入り急に暑くなりました。
コロナウイルス感染予防のための緊急事態宣言も5月末まで続くことも相まって、体調管理が日に日に大切に
なってきています。
金沢市では少しずつマスクが手に入りやすくなってきたため一安心ですが、皆様の地域ではいかがでしょうか。
さて、今回は植栽管理についてお話ししたいと思います。
皆様のマンションにも何かの植物が植えられていて、下記のようなお世話をされているではないでしょうか。
① 水や肥料をやる。
② 草むしりをする。
③ 剪定作業をする。
④ 農薬散布をする。
その他、豪雪地帯では雪囲いや雪吊り(樹木が折れないように)、日差しが強い地域では遮光シート(葉焼けしないように)と、地域に応じての管理も加わりますが、管理人や造園御者が植物の様子を確認しながらお世話されていると思います。
作業内容は様々ですが、共通しているのは「よく観察し、状態に合わせた世話をする」ことです。
今年は5月に入り急に暑くなりました。
弊社の管理しているマンションでも、植栽にアブラムシやヨトウガ幼虫がいきなり発生しました。こんなに早く発生するのは初めてで本当に驚きました…昨年と比べても3週間ほど早い発生でした。
そこで、皆様のお住まいのマンションの植物にも害虫が発生していないか?病気になっていないか?を一度ご確認いただくことをおすすめします。もし気になるところが見つかったら、ぜひ管理人にお知らせください。
(管理人も清掃作業を始め多忙ですので、植栽に詳しくない方であれば発見が遅れることもあります。発見が遅れて被害が広がると、植替え等で費用がかさむこともあります。)
植栽の観察・管理とあわせて皆様ご自身も体調管理を万全にしていただき、一緒に新型コロナウイルスの試練を乗り越えましょう!
カテゴリ
2020.04.08
マンションの管理費の使い道について
コロナウイルスの勢いはとどまることなく私達の生活を脅かしていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
私達もうがい&手洗いで対抗しつつ、マスクを探して仕事終わりに金沢市内をさまよい続けています…。
さて今回は、皆様がお支払いしている「管理費」の使い道について知っていただきたいと思います。
実際、分譲マンション購入をお考えの方や、現在お住まいの方から「分譲マンションの管理費って何に使われる
んやろ?」と質問されることが多いので、私がきちんとお伝えしなければ!と勝手に使命感に燃えている次第です。
賃貸マンションやアパートにお住まいの方は、毎月の家賃や駐車場使用料の他にも『共益費』または『管理費』
という項目で数千円程度お支払いされていませんか?最近は『家賃に共益費込みです』というお部屋も増えてき
ましたが、まだ別項目となっていることが多いようです。
この『共益費または管理費の使い道』にあたるのが「分譲マンションの管理費の使い道」だとお考えください。
使い道としては、主に以下のとおりです。
① 共用部分の清掃費
(廊下や階段・エレベータ・駐車場・貯水槽・排水管など。人件費だけでなく洗剤・ホウキなどの消耗品や道具の費用も含みます。)
② 共用部分の蛍光灯や水道用ホースなど、共同で使用する消耗品を交換する費用
③ 植栽の手入れのための費用
(剪定作業の他、必要に応じて肥料および農薬の散布も行います。)
④ 消防用設備点検の費用
(半年に1回、お部屋の感知器や避難はしごが作動するかの確認を行います。また、消火器や消火用の配管および水槽も点検しています。)
⑤ 融雪装置点検の費用
(砂や錆が詰まるので、秋の終わり頃に点検・清掃します。)
⑥ 警備会社への費用
(警備に加入されているマンションの場合です。)
⑦ 管理人さんへのお給料
⑧ 水道光熱費
(廊下・階段・駐車場などの電灯、エレベータ・ポンプなどの動力は電気が必要ですし、掃除や植栽の水は欠かせません。)
⑨ 管理会社への費用
(管理組合様からの要請で理事会および総会のご案内を配布したり、建物や設備のメンテナンス作業を行ったり、破損した施設や機械の修理依頼を業者様へ発注したりしています。)
⑩ マンションの建物および施設にかける保険金
(火災や漏水、天災等の被害に備えます。)
⑪ 電話や切手などの通信費用
⑫ その他、マンションの事情に応じての費用
ざっと挙げてみただけですが、数多くあります…マンションにお住まいの皆様方が快適に過ごすための費用と考えていただければ幸いです。
というわけで、管理費については滞納が無いようにお収めいただくとともに、総会資料として配付される決算書でお住まいのマンションで管理費がどのように使われているかご確認ください。
カテゴリ