コラム

2021年08月

2021.08.27

専有部分の事務所使用について

 8月に入り、日本各地で大雨による被害が報道されるようになりました。被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
 金沢は時々どしゃ降りの雨に見舞われますが、水害が発生するほどではないことが救いです。とはいえ、初めて迎えた雨模様のお盆には驚きました。
 
 さて今回は『分譲マンションにおける、専有部分の事務所使用』についてお話したいと思います。
 弊社が管理を請け負っている複数の分譲マンションでも、事務所利用に関するお問い合わせを度々いただきます。
 「現在住んでいるマンションの部屋を事務所として使用したいのですが、どうすれば良いですか?」というものです。
 
 マンション標準管理規約第12条では「その専有部分を専ら(もっぱら)住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」と定めています。また「専ら住宅としての使用」とは「生活の本拠」であるかどうかで判断するとコメントに書かれています。つまり「住居としてのみ使用してください。他の使い方はダメです。」という意味ですね。
 
 直近でお問い合わせをいただいたマンションでは、標準管理規約に準じた内容となっていました。そのため、その方には現状は事務所利用が出来ない旨お答えしました。
 
 しかし、新型コロナの影響で家賃負担が重くなり、廃業までは行かなくても事務所を縮小・閉鎖する企業は増えています。また、個人事業主やフリーランスの方など、専有部分を「自宅兼事務所」として届出無しでご利用している方も相当数いらっしゃるのではないか?と思います。
 
 ご自身が所有する専有部分を事務所として利用するにはどんな手続が必要か?については(1)にまとめました。また、管理組合の役員様が、事務所利用の申請に対応する場合の注意点については(2)(3)にまとめました。それぞれご確認いただければ幸いです。
 
(1)分譲マンションで事務所使用が可能になるまでの手順【事務所使用ご希望の方へ】
 ① まずは管理組合と管理会社にご相談ください。
 ② 理事会の議題に取り上げられたら、事務所としての利用を認めるかどうか、役員の皆様による検討が行われます。
 ③ もし理事会で「事務所としての利用も認めよう」と判断された場合は、総会で規約変更の可否を議決します。
 ④ 総会の「特別決議」として3/4以上の賛成が得られたら、規約が変更されて専有部分の事務所利用が可能になります。
 ⑤ 「事務所使用申請書」や「誓約書」等、管理組合から提出を求められた書類はもれなく提出し、ルールとマナーを守って事務所使用をしてください。
 ※ 規約が変更されるまでは事務所利用はできませんので、余裕を持ったスケジュールで準備することをおすすめします。
 ※ 理事会または総会で否決された場合は事務所使用ができませんので、安定した事業運営のためには代替案の準備も重要です。
 
(2)分譲マンションで事務所使用を許可する場合の注意点【管理組合の役員様へ】
 ① 事務所利用を認める場合でも、不特定多数の来客がある「店舗」は認めないよう、周知したほうが良いでしょう。
 ② 事務所利用を希望する組合員には「事務所使用申請書」を提出してもらい、事業内容等を事前に確認する仕組みが必要と思います。
 ③ 組合員本人だけではなく、従業員にも使用細則を守る(守らせる)よう、誓約書の提出を求めても良いでしょう。
 ④ 来客用駐車場は使用しないよう、事前に取り決めを行うとトラブル防止に繋がります。
 (→ 来客用駐車場の台数や使用状況など、各マンションの事情に合わせてご検討ください。)
 ⑤ 騒音や迷惑行為があった場合は「使用細則違反」として、問題が大きくなる前に毅然とした態度で改善を求めましょう。
 
(3)分譲マンションで事務所使用を認めない場合の注意点【管理組合の役員様へ】
 ① 事務所使用を認めなかった理由について、申請された組合員にお伝えしてあげてください。
 ② 理事会議事録や次年度の総会などで、事務所利用ができない規約になっていることを全員に周知してください。
 ③ 申請を却下する場合は、「届出無しで事務所使用している方に、どのように対応するか?」についても決めておいたほうが良いでしょう。特に、申請を却下した場合は「自分は正直に届け出して却下されたのに、〇〇階のあの人は勝手に事務所利用していてずるい!」という不満がでる可能性が高いです。
 ④ 対応策の一例です。
 ・ 例外なしで全面的に禁止。事務所使用が見つかった場合は管理組合として厳正に対処し、事務所の閉鎖を要求する。
 ・ 「来客なし、事務所名の掲示や看板なし、騒音なし」など、入居者の生活に影響がない場合に限り黙認
 
 管理組合にとっては、事務所使用は認めても認めなくても厄介な問題だと思います。
 特に最近は、事務所としては使用していなくても、テレワークで自宅勤務している場合は実質的に同じではないか?という意見もあります。
 事務所使用に限らず、専有部分の利用方法というのは、ライフスタイルや環境の変化に合わせて柔軟な対応が必要な課題かもしれません。弊社としても継続的に情報収集を行い、時代に合わせた提案を心がけたいと思います。
 
 以上、少しでも参考になる部分があれば幸いです。

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